背振山通信基地群
 
福岡市早良区、佐賀市脊振町 22.7ヘクタール
 
 変化の著しい航空自衛隊のレーダー基地のある背振山からです。背振山の山頂に立つと、すぐ横にレーダードームがあり、その下側には新たに昨年から建設されていた施設が見えます。登ってきた登山道側を見るとレーダードームや高い鉄塔の横に取り付けられたパラボラアンテナ群が見えます。

 軍事における通信は、戦争の勝敗を左右する重要性を持っており、第一次湾岸戦争に派兵を決めると同時に通信部隊がいち早く現地に派遣され、また、一番早く米軍が攻撃したのはレーダーおよび通信基地でした。

 静かな見晴らしのよい山頂ですが、日夜動いている通信基地は、戦争になれば最初の攻撃目標となる基地であると同時に、軍事の動きが一番早く変化するのが通信基地です。

 背振山通信基地群(22・7ヘクタール)には、米軍通信所(0・88ヘクタール)と航空自衛隊の「航空警戒管制部隊」とがあります。

 米軍通信所は、1966年接収され、板付の1955通信大隊の連絡所となり、77年米軍の板付撤退により移動してきた通信施設です。

 佐世保〜岩国間及び佐世保〜対馬〜釜山間のデジタルマイクロ無線の背振山の鉄塔は部分撤去され、パラボラアンテナもなく、佐世保・岩国の鉄塔撤去や対馬の中継所も休止状態(電気代11万円―03年度)から判断し、背振山の米軍通信中継は休止状態と見られます。

 この米軍通信所の代替になっているのが、@自衛隊の防衛統合デジタル通信網(IDDN)、ANTTの全国的なデジタル通信網、B米軍の宇宙通信の利用が考えられるが、沖縄〜佐世保間は光ファイバー海底ケーブルで連絡され、NTT光ファイバーの米軍専用回線で横田・岩国にも接続している中で、朝鮮半島への通信網だけがどうなっているかが疑問な点が残っています。

 航空自衛隊の「航空警戒管制部隊」は日本全国に28ヵ所。西部航空方面隊には、7ヵ所(高尾山、見島、海栗島、背振山、福江、下甑島、高畑山)ある。97年、背振山頂の従来のドームが撤去され、新しいドームが山頂と旧へリポート跡の2ヵ所に設置された固定式3次元レーダー(J/FPS―3)が、98年から稼動しています。

 このレーダーは「世界水準を抜く高性能のアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー方式の採用で、遠距離用と近距離用の2種類の空中線装置を持ち、従来レーダーより探知・追尾能力が向上、擬似電波発生装置(デコイ)によって電波ホーミング・ミサイルに対しオトリ電波を出すので電子戦にも対応できる。さらに信号処理装置などは地下に設置されるので、抗堪性も向上」(自衛隊装備年鑑)しています。

 北朝鮮や中国の脅威を煽りながら進められている「弾道ミサイル防衛」は、平成16年度関連経費として、イージス艦、ペトリオットミサイル、自動警戒管制組織(バッチシステム)などのシステム改修や取得に向け、1068億円を計上しました。

 ミサイル防衛関連で、背振山のレーダーは全国で5ヵ所改修されるレーダーの1つであり、下甑島には新たに開発・試験中のFPS―XXレーダーがまもなく配備が開始されます。(全国で4ヵ所)

 背振山通信基地群での変化の一番大事な施設が、航空自衛隊の「地上電波測定装置」です。

 山頂の西側に高さ約20m、幅約70m、奥行き約30mの巨大な建物です。この「地上電波測定装置」は、北海道の3ヵ所(稚内、根室、奥尻島)にしかなく、冷戦時代の極東地域の旧ソ連軍の動向を24時間体制で情報収集していたもので、今なぜ同じ施設が背振山に設置されたのか考えねばなりません。

 (注):沖縄の宮古島にも同施設が05年度整備開始し、07年度に運用開始予定

 この施設は、短波(HF)、超短波(VHF)、極超短波(UHF)などの他国の電波を収集し、分析するスパイ基地であり、中国、朝鮮半島の軍事情報収集を目的としており、明らかに北方から西方重視にシフトした自衛隊の動きと期を一にする動きです。

 稚内基地の「電波測定施設」は、83年9月1日の大韓航空機撃墜事件の際に、ソ連軍用機と大韓航空機との交信記録を傍受し、暴露したことで有名になった施設であり、電波戦は戦時だけでなく、平時における実績の積み重ねが大切で、信号情報収集(シギント)は、通信情報収集(コミント)と電子情報収集(エリント)に分類され、他国の通信電波や火砲の射撃管制レーダー波やミサイルの誘導電波、警戒用レーダー波等を収集測定、分類、分析し、戦争時の電波戦の基礎資料とするための施設です。

 このように一見静かな通信基地群の山頂に完成した「電波測定装置」が、戦争するため、日常的に準備をおこなっている施設です。

 私たちの周りの基地が戦争する自衛隊に変貌しようとする危険性を県民のみなさんに訴えていくのに役立つことを期待します。